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ジャズファン必読:「ジャズ・クラブ黄金時代」NYで600超のライブ・レポート

(番外編)

今日、私の手元に届いたのは、小川隆夫 著の最新作「ジャズ・クラブ黄金時代」。
とりあえず本をパラパラとめくるつもりが、700ページに及ぶこの作品に引き込まれ、気づけば最後のページまでめくっていた。整形外科医としてニューヨークに留学していた1981年から1983年の間に体験した600本ものライブが、日記のように細密に記録されている。

小川氏の記述は、ライブハウスの雰囲気からミュージシャン、楽器、楽曲に至るまで、細部にわたって描かれている。彼の率直な感想や、ライブ前後のミュージシャンやスタッフとの交流も綴られており、読んでいるとまるでその場にいるかのような臨場感が伝わってくる。例えば、酔いつぶれた大物テナーサックス奏者のDexter Gordonを自宅まで送ったエピソードや、Sonny Rollinsがステージ上で倒れた瞬間など、彼の筆致からは当時のジャズクラブのドラマがひしひしと感じられる。

さらに、小川氏が超有名ミュージシャンたちと築いた人間関係の描写には驚嘆する。マンハッタン南部のヴィレッジにあるアパートで偶然にも隣人であったWynton Marsalis、彼の兄Branford、そしてArt Blakeyとの家族ぐるみの交友を楽しんでいた様子は、まさに彼の「人を惹きつけるパワー」の証だ。Artの部屋で紅茶をいただいたり、彼の膝の痛みを診たり、Branfordと共にマクドナルドで食事を楽しんだり、Wyntonのライブ会場に一緒にタクシーで向かったりと、日常の交流が生き生きと描かれている。

ジャズのライブに600回以上も参加した人や、レコードを何千枚も保有したり、大好きなアーティストと話したりしたことある人はいるかもしれないが、それを小川氏のように詳細に記録し、共有する人は稀である。彼の伝承するジャズという文化の歴史は、今は亡き巨匠たちが舞台上で、そしてオフステージでどのような人間であったかを知る唯一の手がかりであり、まさに宝物である

Charlie Parkerと共演したTiny GrimesがParkerの話を延々と語るのを、小川氏が「ジャズの歴史の中に自分がいる」と感じたエピソードは、この本を読む私も全く同感になる。まるで自分がニューヨークのジャズシーンの中にいるかのような錯覚を覚えさせるこの本は、ジャズのファンにとって必読の一冊である。

(個人的なエピソードとして、小川氏NY滞在期間中の1982年の年末に私はWyntonのアパートでトランペットのレッスンを受けたことがある。そのアパートが1ベッドルームだったことはこの本で今知ったし、兄のBranfordや、まだ子供だった神童ベーシストCharnett Moffettなど多くの若者が居合わせたことなど、この本で新たに思い出した。レッスン代を受け取らないばかりか、ランチをご馳走してくれたWyntonの優しさが、この本を通じて再び心に響く。)

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